5 天然記念物

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僕は恋愛的な男女の関係に疎いらしい。 同僚はそんな僕を天然記念物と言ってからかってくる。 彼女がいたことはもちろんある、しかし何をしていいかわからず、結局毎回早々に別れることになってしまう。 「何をしていいかわからないって…こう無性に会いたくなったりしないのか。触ったりしてみたいとかさ」 大学の同期で同僚でもある享に相談した時のことだ。 彼の顔と彼がふかしていた煙草の灰がポトリと落ちた画が「呆れた瞬間」のテンプレートのようだったのでよく覚えている。 「無性に…ってどんな感じなんだ」 彼は頭を抱えた。 「奏人、お前重症」 ちょっとこい。と言われて大学の喫煙所を出て、学食に移動した。 昼休みの学食は案の定生徒達でごった返している。 ちょうど僕らと入れ替わるようにして2人がけの席が空いたのでそこに腰掛けることにした。 僕はかばんからごそごそとサンドイッチとペットボトルを取り出した。 本当は喫煙所近くのベンチで食べるのがここ最近の日課だったのだ。 享は昼ごはんも出さずに怖い顔をしてあたりを見回している。 「享、顔怖いよ」 僕はコンビニのサンドイッチの包装をぺりぺり剥がしていく。享はそのままの顔で僕をじとと見つめた。 「お前は不健全だ」 「はぁ」 「見てみろよ」 そう言って僕から見ての斜め左前にいるカップルのほうに顎をしゃくる。 彼らは誰が見てもカップルだと一目でわかるような幸せオーラ全開でご飯を食べている。 仲が良さそうでなによりだなぁ。と僕が微笑むと享が僕の手の甲をつねってきた。 「いったいよ、なに」 瞬間的な痛みにさっと手を引っ込める。 少し爪の跡がついている。
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