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「いまなに思った」
「え、仲が良さそうでいいなぁって」
「どうしてそう思った」
なんだか尋問されているみたいだ。
享の真面目すぎる顔に笑いそうになったけどぐっとこらえて、もう一度享越しにカップルを見やる。
2人とも笑顔で何かを話している。
彼氏のほうはテーブルに置かれた彼女の手に、まるで当たり前のように自分の手を重ねている。
そして彼女もそれが当たり前のようで、気にしている様子も見えない。
つまりとても、
「自然だ」
「はぁ?」
僕がぽつりと呟いた言葉に享は意味がわからないというようなため息をついた。
僕は相変わらずカップルのほうを見て、2人の世界って言葉はいまあの2人のためにあるんだろうな、なんて考えていた。
「お前って本当に変わってるよな」
享は諦めたように言う。
「モテるくせに、植物のことしか興味ないのか」
「モテないし、そんなことないよ」
「嘘つけ、俺が何人仲介したと思ってる」
僕は普段大学の研究室に入り浸りで、外に出るときは大抵植物の採集をしている。
そんな時の僕は集中力が目に見えて話しかけづらいのだという。
享はそんなのお構いなく話しかけてくるから、僕に用がある人は大抵享を通してくる。
もっとも、僕はみんなも享と同じように普通に話しかけてくれれば良いのにといつも言っているのだが、みんなもその儀式のようなものが当たり前になってしまっているらしい。
「それはいつも申し訳ないと思ってるけど、告白とかそういうのじゃないよ」
「じゃあなんだっていうんだ」
「えーと、植物のことで聞きたいことがあるから今度お茶でもとか、実験を手伝ってほしいとか、授業のレポートを一緒にやらないか…とか、まぁ便利屋みたいになってるよ」
僕がヘラと笑うと享は頭を抱えた。
「俺にはお前の頭から花が咲いてるように見えるね」
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