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ガッキリキキィィィッ!! 辺りに響いた音を頑張って文字で表現するなら、こんな感じ。 火花が散る勢いで金属同士が擦れ合い、込められた力を相殺しあう耳障りな重い音を奏でた。 これが音を生み出してる当事者同士じゃなかったら、今頃は鳥肌全開になっていただろう。 それは例えるなら、放置して伸びきった爪で黒板を力任せに容赦なく斜めに引っ掻いた時みたいな不快な、身悶えたくなるようなゾワゾワ感。 「ふぅん。良い反応」 華奢な体系からは想像も出来ない重い一撃をくれたニンゲンは、にんまりと紅い唇を歪ませて嘯いた。 呆気ない程直ぐに交えていた刀を引かれたけど、予備動作もなく間合いに躊躇なく踏み込んできた力量と、一瞬だけ確かに向けられた殺気に充てられて、何時もは隠してる本能が出たい出たいと首の後ろを疼かせる。 「菖蒲(あやめ)。引いて」 剥き出しになりそうな本能を宥めるように撫でたのは、主様の柔らかな声。 その何時も通りの声色に今回もちゃんと此方に戻ってこれたんだと安心したら、内部でざわめいていた本能が少しだけ落ち着きを取り戻した。 それでも熱を帯びた本能は簡単には引かなくて、つい不満げな声をあげてしまう。 「でも…」 「菖蒲。お願いだから」 アタシは主様の『お願い』に物凄く弱い。 あくまで形式上だけであっても使役されている立場では自分の意思に関わらず、主からの『命令』は絶対だ。 今回のコレは命令とは違うから従わなくても別段ペナルティが発生することもないし、言葉自体には何の縛りもないから制限も特にはない。 にも拘わらず、主様から懇願に近いお願いされてしまうと未だかつて断りきれた事は一度としてないのが現状だったりする。
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