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僕はじいちゃんの言う通り、頭の中の夜空に星を思い浮かべた。するとたちまち頭の中の夜空は、満天の星空になった。さっきまであった月はどこかへ行ってしまったみたいだ。
「じいちゃん、満天の星空が見える」
「そうだろう。空はちゃんと星を返してくれたんだよ」
じいちゃんがまた大きく、ふぅーっと息を吐いた。
「頭の中では見たいものが見られる。それを実際に見てさえいれば、いつだって紺は見たいものを見られるんだよ」
じいちゃんの言っていることは、わかるようなわからないような、難しい話だった。
いつもとは少し違う話だった。
僕はゴロンと転がって、じいちゃんに近づいた。
もそもそと足を動かしてじいちゃんの布団へ潜り込んだ。
ひんやりと冷たく硬いじいちゃんの布団は、僕の体温でじんわりと暖かくなっていった。
「紺は暖かいねぇ」
眠たそうにじいちゃんが呟いた。
そして規則的な呼吸が繰り返される。
外では、月がようやく薄雲を抜けた様だった。
夜空が一気に明るくなり、月明かりが部屋まで届いた。
僕の頭の上を通り抜けて、じいちゃんの顔の上を通り抜けて、障子紙の白に反射した。
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