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秋の空の星は、じいちゃんの話とは逆に細かくキラキラと輝いていた。大きく光る星はもちろん、小さな無数の星々までよく見えた。
「じいちゃん、今日の空は星がたくさんあるね」
僕がそう言うと、じいちゃんは空の隅から隅まで大きく見渡して
「そうだな、今日は小さい星までよく見える」
と言った。
月は薄い雲に隠れてぼんやりと僕とじいちゃんを見ていた。星は忙しなく、それでも優しくあたたかく瞬いて見守ってくれていた。
すぅーっと大きく息を吸う音が聞こえて、そしてそれが、ゆっくり長く吐き出された。
「……さぁ、紺。もう冷えるから中へ入ろう。続きは布団の中で話してあげよう」
「うん」
僕はじいちゃんの後について、カッツンカッツンと音を立てながら家へ向かった。
鈴虫は、いっそう大きく鳴いているようだった。
コオロギも。その他の虫たちも。
風が吹いた。
チリンチリンと、どこかの家の、仕舞い忘れた夏の名残が音を立てた。
その音は、風をいっそう冷たく感じさせたが、同時に夏の暑さと蝉の鳴き声を思い出させた。
季節の変わり目は不思議だ。
人は不思議だ。
確かに進んでいる季節を目で見て肌で感じ、それと同時に頭は過ぎた季節を懐かしむ。
僕はつまづいたふりをして、じいちゃんの手を握った。
少し皺が増えて薄くなった手のひら。
胸の奥が、すぅっと冷たくなった。
「どうした?つまづいたか?」
ははは!っと抑えた声で笑い、じいちゃんは僕の手を握り返した。
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