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「それで、丘の上まで登って行って夜空にお願いしたんだ。星を返して下さいってね。でも本当は月にお願いしなきゃいけなかったのかもしれない」
真っ暗な天井を見上げながら話を聞いていると、そこがまるで星空のように感じた。
「月は、じいちゃんをバカにしているかのように、いっそう輝いて、月の周りの雲なんかも金色に輝いていた。星は戻ってこなかったよ」
「そうなの?じゃあなんで今は星が見えるの?」
「それに気づいたのは、今の紺よりももう少し大きくなってからだったかな……紺。目を閉じて月を思い出してごらん」
僕はじいちゃんに言われるままに目を閉じた。頭に夜空を思い浮かべて、そこに輝く月を思い出した。
「月は星を食べてはいないんだよ。星はいつもそこにいるんだ。月が強く輝くと、星の輝きよりも月に目がいくんだよ。ただそれだけなんだ。ほら、紺。今思い浮かべている夜空に星を浮かべてごらん。星を見よう見ようとすると、自然と見えてくるだろう」
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