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暗闇の中では見えなかった、じいちゃんの顔がようやく見えた。
青白く見えるじいちゃんは、柔らかく目を閉じていた。顔には皺がいくつかある。
口元は少し微笑んでいるようにも見えた。
視線を下げると、じいちゃんの胸の上に乗っている布団が微かに上下していた。
すぅー。すぅー。
と小さな呼吸音が聞こえる。
僕はその様子をジッと見ていた。
呼吸音を聴いていた。
布団が上下する様子を眺めていた。
これが、じいちゃんだと頭に叩き込んでいるようだった。
いつか、じいちゃんを頭の中に思い浮かべるようになるのかもしれない。
満天の星空を思い浮かべたように……。
『実際に見てさえいれば、いつでも思い浮かべることができる』
じいちゃんの言葉がこだました。
僕はますます、寝ているじいちゃんから目を離せなくなった。
布団が上下する様子。
柔らかく閉じられた瞳。
微かな笑みを浮かべた口元。
規則正しい呼吸音。
それらを僕は、静かに感じていた。
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