私の事情

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発車間際の電車に駆け込み乗車した私は、いつも乗る車両とは違うことが気になった。ここだと笠井駅で降りたときに、階段までかなり歩くことになる。 笠井駅からはバスに乗って帰るので、バスの時間をスマホで確認した。すると、ホームの端から端までゆっくり歩いて行っても十分間に合うことがわかってホッとした。 笠井はターミナル駅なので乗降客が多い。にもかかわわらず、私が乗っていた1番後ろのドアから降りたのは2人だけだった。 疲れたなぁ。 3時間目と4時間目の体育の授業がバスケだったのが痛かった。2時間連続授業でバスケはキツい。もうヘトヘト。 ホームをトボトボ歩きながら、ふと気づいた。 あれ? 私と一緒に降りたおじさんは? リュックを背負い直す振りをしながら何気なく後ろを振り返った。 背の高いスーツ姿の男の人が私の少し後ろを歩いている。 ”おじさん”かと思ったら、まだ若そうな人だった。山口先生と同じぐらいに見えるから20代かな。 それだけ観察すると、また前を見て歩き出した。 前方に会社員風の男性が何人か歩いているけど、私との距離はどんどん広がっていく。 足の長さが違うんだもの。歩くのも速いよね。 そう考えて、またあれ?と疑問に思う。 どうして後ろの男性は私を追い抜かないんだろう。 パッと見ただけで背が高いという印象の人だ。 老婆のようにトボトボ歩いている私なんか、とっくに抜かして行って当然なのに。 リュックの肩ひもを持ち上げ制服のベストを直す振りをして、もう一度チラッと後ろを見た。 さっき見たときと同じぐらいの距離を保ったまま、彼は歩いている。 一瞬、目が合ってしまい、慌てて前を向いた。 なんで? なんで? あの人、足が悪そうでもなかった。 なのに、不自然なほどゆっくり歩いている。 気が付けば、ホームには私たちしかいなくなっていた。 隣のホームは本数の少ない路線なので、今は人っ子一人見えない。 知らず知らずのうちに私の歩調は速くなっていた。 それに比例するように後ろから足音が迫ってくる。 ヒタヒタと言い知れぬ恐怖が胸に広がってきた。
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