久我先輩はイケメンである

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面倒な人に好かれたものだ。 「それを聞いて俺は、はいそうですか。付き合いましょう。とは言いませんよ。」 いくらイケメンでも、いくらこちらを見つめてくる目が少し怖くても俺はこの人の気持ちに応えることは出来ないし、そんな簡単に済ませていいものだとも思っていない。 「...どうしたら付き合ってくれるんだ。」 この人は振られるという事を経験したことが無いのだろうか...?捨てられた子犬のような目をしてこちらを見てくるだけで、俺の言葉を待っている。 「どうって...。そもそも俺も先輩も男です。それに俺じゃなくても先輩なら他にもいい相手が見つかりますよ。」 大前提で男同士だ。別にそう言う事に偏見があるわけでは無い。実際俺の中学の時の担任には同性のパートナーがいた。それでも楽しくやっているようだった。 だが、それとこれとは違うと思う。 俺の恋愛対象は女であって、男ではない。 「...お前が初めてなんだ。側にいても悪夢を見なかったのは。」 悪夢...。 「むしろ心地良かった。...多分俺にはお前しかいないんだ。」 キザな口説き文句みたいなものがここまで胡散臭く聞こえないのは何故なんだろう。この人が心の底から思っているから、顔がいいから、俺がこの人を好きになりかけてるから。 最後のは無いと思いたい。 が、求められて嬉しくない奴はいないと思う。 「...俺は...先輩の事もよく知りませんし、そんな状況で好きだ。付き合ってくれ。と言われてもどうしょうもないです。」 これじゃ、まるで良く知ったらいいみたいに聞こえるか...? 「でも、先輩の気持ちは嘘じゃないだろし、茶化して言ってるとも思いません。」 だって仕方が無いだろ。 「俺の事惚れさせて下さい。先輩が言うように俺が必要ならそれくらいの事出来るでしょ。」 平凡な人生。 「...分かった。」 少しくらい非凡が欲しくなる時もある。
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