満月 ー フルムーン ー

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現れた時、輝くような美貌だった魔女は、魔法をかけた後は背を向けて、決してメイティを見なかった。老いさらばえて縮み、丸まった背中で「お行き」とメイティを促した。 「百万回目の願いなんて、きっとあれは本当じゃないです。あの魔女様は・・・髪は銀色、瞳は深い紫色でした」 あの第一の従者様と同じです、とメイティは訴える。 「魔女様は、夜の女神様です。第一の従者様にお会いして分かりました。・・・きっと、あの魔女様が力全部を使って叶えたいのは、私なんかの願いではなくて、あの従者様の願いです」 セシリオは思ってもみなかったことを言われて、戸惑った。 「あいつの願い? まさかあいつが女になりたがってるとでも言うのか」 メイティが焦れたように叫んだ。 「そうじゃありません! あ、あの方は、殿下をお慕いしてらっしゃるのではありませんか?」 セシリオは束の間沈黙した。 流れる銀の髪と濃紫の瞳・・・あの顔で女だったら、とセシリオは毎晩のように欲情して、枕を抱き込んでいる。そして侮辱に等しい夢想にふけった翌朝、色めいた気配など微塵もないルーファスに心の中で懺悔するのだ。 だが・・・。 「ルゥからそんな目で見られたことはないし、俺があちこちの女の元に忍んで行く時だって、あいつが馬を用意してるんだぞ?」 「・・・国境の村までお守りくださる殿下への憧れが今、吹っ飛びそうになりました」     
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