満月 ー フルムーン ー

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「またそんな投げやりなことを。せめて、顔が好みとか声が美しいとか、ひとつくらいは好きな特徴を持つ女性になさっては?」 セシリオは柱によりかかって、美しすぎる従者 - ルーファスをジト目で振り返った。 「おまえ、適当に選ぶってところは止めないのか」 「ええ、殿下にとって有益な家柄の娘しか招待していませんから。決めてくださるなら、どなたでも。私も舞踏会は殿下以上に苦手ですので」 そう言って冷めた眼差しをホールに向けるルーファスは、銀糸の髪に濃紫の瞳という、夜の女神と同じ色彩を持つ美しい青年だ。ただし、その美貌を間近で堪能したくても、凍える温度の眼差しが怖すぎて、大抵の女性は尻込みしてしまうが。 それでも遠巻きに熱い視線を送ってくる貴婦人達は多く、ルーファスは人前で一時も気を抜けない。 淡い紅色の唇が、不似合いな口調で不満をこぼす。 「まったくもって、うっとうしい」 「おい、もれてるぞ。心の声はちゃんとしまっておけ」 苦笑したセシリオに、ルーファスは艶やかな微笑を向けた。 「選ぶのをお手伝いしましょう。殿下が女性に、第一に求めるものは?」 「他人事だと思って。俺で遊ぶ気か」 「今夜の舞踏会は、楽しめそうな気がしてきました」 おい、とセシリオは苦笑を深めた。 「殿下のお好みは?」 「・・・おまえ」     
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