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セシリオは指先でルーファスの胸を軽く押す。
ルーファスが面白そうに片眉をあげた。
「残念ながら殿下、私ほど美しい容姿の者は滅多におりませんよ? ・・・・他にご要望は?」
「男の言うセリフか、それ。・・・だがそうだな。国一番の美人はもう俺のものだから、婚約者を顔の美醜で選ぶのはやめておこう。そうすると、声か、胸の大きさか?」
わ、とどよめきが上がって、二人は同時にホールの入り口に目をやった。
騒然とする中、美しい、美しい、と同じ形容が繰り返される。
大勢の見物人の熱に圧されるようにして、令嬢がエスコートもなくひとりで、ドレスをすべらせてホールへ入ってきた。
白銀のドレスに身を包み、連ねた大粒のパールで淡い金髪を華やかに飾り立てている。大きな瞳は、優しいライトブラウン。けれども瞳が見えたのは、何本も差し出された手に驚いて顔を上げた、ほんの一瞬だけだった。
彼女はすぐに目を伏せると、困ったように立ち止まる。
セシリオは首を傾げた。
遠目にも、美しいと絶賛されるような美貌とは思えないばかりか、その立ち居振る舞いは厳しい教育を受けた令嬢のそれとは明らかに違う。
町の娘が綺麗に着飾って紛れ込んできたような・・・。
「ルゥ」
「確認してきましょう」
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