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同じことを思ったのか、ルーファスが背筋を伸ばして柱の陰から歩み出た。
後ろで無造作に結わえた銀髪が、さらりとセシリオの前を流れていく。
(あいつを毎日見てたら、普通に美人な女を見たって無感動なんだよな)
ルーファスがその令嬢に歩み寄ると、ほうっとあちこちから吐息がもれ聞こえた。
漆黒の上衣に濃紫の留め具の正装に身を包んだルーファスは、清冽な輝きを放って周囲を圧倒する。
しかし、その足取りが途中で一瞬乱れた。
驚いたセシリオは、柱に預けていた身体を起こす。けれどルーファスは何事もなかったかのように、皆が注目する令嬢の前で腰を折った。
「純白のパールよりも美しいご令嬢に、ご挨拶申し上げます。私はセシリオ殿下の第一従者、ルーファス=アルバーン。どうぞ最初にあなたのお手を取る栄誉を、私にお与えくださいませ」
押し殺した黄色い歓声が、さざなみのように令嬢たちの間からあがる。
セシリオは、(やりすぎだバカ)、とかゆくなった背中を柱に押しつけた。
濃紫の神秘的な瞳に見つめられた令嬢が、なぜか驚愕の面持ちで目を見開く。
「あなた様が、セシリオ殿下の・・・第一の従者様? ・・・ではあの、殿下はどちらでしょう」
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