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不意にくらりと目眩がして、セシリオは目をこする。甘い香りが鼻先をかすめた。
(これは・・・・・!)
魔性を感じる。
「・・・殿下?」
震える声がして、ふわりと白銀のドレスが視界の端に入ってくる。
セシリオが鋭い視線を向けると、頼りなげな表情をした令嬢が深々と頭を下げた。
「このような場違いな者が、お騒がせして申し訳ありません。ですが、あの・・・」
「話はあちらで」
セシリオは、令嬢をホールの奥へと誘う。
ついてこようとする全員に、視線で「来るな」と示した。
理性が残っていたのか、あるいは王族の持つ魔力が働いたのか、全員がその場で足を止めた。
ルーファスも立ち尽くしている。セシリオは令嬢の手を引きながら、ルーファスの揺れる瞳に一瞬きつい眼差しを向けた。
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