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なるほど、とセシリオは目を細めた。自覚なく残忍な魔女らしい仕業だ。ポウ、と見せつけるように、ガラスの靴は強い魔力の輝きを放っている。
「それで? メイティ嬢、君はその魔女に何を願った?」
薄々察しはついたが、セシリオはそう尋ねた。
するとメイティは恥ずかしそうにうつむく。
「お許しください。私は殿下の・・・・第一の従者になりたいと願っておりました」
「従者に、だと?」
眉をひそめたセシリオに、メイティは必死の様子で言い募る。
「あ、ち、違うんです。魔女様に直接お願いしたわけではなくて、納屋へ行く途中、あんまり月が大きくて綺麗だったので見上げて、そうなったらいいなあと願っていただけなんです」
確かに、今夜は月が近い。濃い黄色の、圧倒する大きさで輝く満月ーフルムーンの夜。
「そうしたら魔女様が現れて、私の願いが月への百万回目の願いだったから、と私をこの姿に」
「待て。いや待ってくれ。君は、俺の妃にではなく、従者になりたいと願ったのか?」
メイティはきょとんと瞬いた。
「あ、はい。そうです」
「なぜ? いや、もし本当にそう願ったなら、なぜ貴公子ではなく、令嬢の姿で現れた?」
メイティはひどく申し訳なさそうに、「ごめんなさい」と謝った。
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