僕の願い事

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 上京してからの僕は慣れない仕事、環境に悪戦苦闘してるうちに、心を開くのは何だか人に弱味を見せるみたいで、自分から壁を作ってしまっていた。人の心に踏み込んでいく勇気も関わろうとする積極性も持てず、いつしかどうやって人と会話をすればいいのかさえ、わからなくなってしまったんだ。    結果、僕は一人になった。  孤独に耐えられなくて、常に人の気配を探すようにフラフラしてるくせに、どんな矛盾だと僕も思う。  そんな自分が、凄く嫌で嫌で堪らなかった。    それでも、どうしたらいいのかわからず答えを探し求めるように僕が彷徨うのは、誰かこんな自分を救ってくれるんじゃないかって、どこか期待してるからだ。  どこまでも他力本願で情けなくて、僕は思わず自嘲した。 「どうしたブラザー? 何か夜空に面白いのでも見つけたのか?」  自分にも教えてくれと、ブランコから身を乗り出すように訊いてきたスターに僕は顔を向ける。  面白いものか。  まあ、それなら目の前にいるお前だな。  こんな奇妙な生き物と普通に会話してる僕も、他人から見たら面白い光景なのかも……    ――いや、ないなこれ……ないよ、これ。  冷静に考えると、これ通報もんじゃないか?  あまり深く考えないようにして、とりあえずファンタジーで片付けてたけど、こいつ何なんだろう?  あれ、今更ながら何か僕、謎の生命体に遭遇しちゃってるよね、これ!? 「……あのさ、スターって何者?」 「おっと! ブラザー、俺の個人情報はノーコメントだぜ! ミステリアスなままの俺を好きでいてくれ」  こいつ、殴っていいかな? 「強いて言うなら、ブラザーの願いを叶えに来たお星様の妖精的な何かだな」  妖精的な何かって、何!? 「メルヘンだね~ま、地球人的に言うと、宇宙人だけどな俺。あっ、これ秘密な」 「お前、言ってるよ秘密! お前の口から、個人情報だだ漏れしてるよ!」 「ミステイク! すまねぇ、ブラザー……俺の正体を知られたからには、俺はもうここにはいられない……」 「いや、そっちが勝手に言っただけだから!」  ブランコから、ぴょんと飛び降りるとスターが神妙な面持ちで口を開く。 「ブラザー……俺達、別れよう……」
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