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「さあ、ブラザー、サインをフルネームで頼むぜ! あと、俺の評価をお星様を塗り潰して100段階評価でつけてくれ」
塗り潰すの、めんどくさ!
普通10個までだろ。
そもそもお前、マイナス評価だよ!
僕は受けとり、黙々と書類に書き込んでいく。
書き終わった書類を無言で差し出すと、受け取ったスターがシュルシュルと手を縮めて、書類とペンを口に放り込んでムシャムシャと口を動かした。
「そういうことだから、お互い前向きに生きていこうぜ、ブラザー!」
右手の親指を立てながら爽やかに言ってるけど、何か腑に落ちないのは何故なんだろう?
僕の口からは、重いため息しか出ない。
ああ、別にいいさ。
確かに、僕の願いは叶った。
話し相手になって欲しいっていう願いが。
こんなに早く終わりが来るとは、夢にも思ってなかったけども……いや、もう夢でいいな、これ。
何の奇跡か。
本来なら出会う筈がなかった僕らが、過ごした時間。
それは僕にとって、ようやく僕が僕らしくいられた時間でもあったのは事実。
忘れていた、誰かと過ごす楽しさ。
僕が求めていた――人ではなかったけど――誰かとの繋がり。
それをもう一度思い出させてくれたスターに、僕は感謝しなきゃいけない。
そして、この夢のような時間を終わらせなきゃいけない。
僕はブランコを降りてスターに近付くと、目線が合うようにしゃがんだ。
「スター、お前と話せて良かったよ。短い間だったけど、凄く楽しかった。ありがとう」
「俺も楽しかったぜブラザー! 今まで色んな願いを叶えてきたが、ブラザーの願いが俺は一番叶えられて良かったと思ってるぜ!」
「……また、いつか会えるかい?」
「ブラザー、俺はスターだぜ? 夜空を見上げればいつでも会えるさ!」
「そうだな……会いたくなったら、これからは夜空を見上げることにするよ」
「俺もいつでもブラザーの事、遠くから見守ってるからな! じゃあな、ブラザー!!」
そう言ってスターは強い光を放ちながら宙に浮かぶと、そのまま空に昇っていった。
途中、その光が消えてしまったが、きっと自分の戻るべき場所に帰ったんだろう。
明日から勇気を出して、僕は僕の場所で人に関わっていこう。
僕はブランコに座り直すと、そのまま星が輝く夜空を飽きもせず、空が白むまで見上げていた。
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