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夏樹の肩を揺さぶりながら、叫ぶ。
通りすぎる人々は、何事かと覗き見ながら去っていく。
夏樹は、なにも、言わなかった。
ただ、泣き叫んでうつむく奏都を受け入れた。
なにも言わない夏樹が何となく気にさわって、勢いよく顔を上げた。
『なんか言ってよ!夏、樹…?』
奏都は、そこで言葉を止めた。
夏樹が、泣いていた。
一筋の涙を流していた。
はっとした。奏都はそこで我に返った。
夏樹だって、悲しいのだ。
離れていくのは、夏樹。
夏樹のほうが、悲しいに決まってる。
泣いてちゃ、いけない。
奏都はごしごしと腕で涙を拭って、なるべく明るく言った。
『ねぇ、今日はまだ、いかないんでしょ?星、見に行かない?二人で』
その言葉に、夏樹は涙で濡れている顔で、嬉しそうに、うなずいた。
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