最後の夜

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小さな、見晴らしのいい丘。 いつもの場所で、いつもの笑顔でそこに座っていた。 『夏樹、お待たせ』 『そんなに待ってないよ。それより星、もう見えるよ』 夏樹の言った通り、空には星がたくさん見えていた。 二人で座って、空を見上げる。 一言もしゃべらない沈黙の時間。 でもそれは、長い間一緒に過ごした奏都たちには苦にならない、優しい安心できる時間。 『あ!流れ星!』 気付いて声をあげる。 どっちが声を出したかは、いまはよく覚えていない。 ひとつ通り過ぎると、またひとつ、またひとつと流れてきた。 そっか。もうこれが、最後なんだ。 二人で星をみられるのは。
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