金平糖

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 吹けば飛ぶような恋心でしかなかったんだ。 「……もちろん、いいわよ」 「……よかった」  ああでもやっぱり、私は君を愛している。  金平糖の袋が破れて、流れる地面にバラバラ溢れているのに気付いたのはこう思ったときだった。これ以上溢れないように袋を指で塞ぐと次は涙が溢れてきた。  あの人の建てた一軒家、私たちの家に着いた。軋んだブレーキ音でそれを確認すると素早く袖で涙を拭って自転車から降りる。 「気を付けてね」 「うん、ありがとうお母さん……っと、忘れるところだった」  鍵を開けて家の玄関から、花束を持って来た。 「こっちは彼女の分、で、こっちはお母さんの分。季節外れだけれど、カーネーション」 「えっ?」 「いやあ、母の日でもないのに、恥ずかしいなあこういうの。でもこれも、人生の節目だしね。いつもありがとう、お母さん」  レストランにサプライズの打ち合わせをしに行くんだ、言い残して颯爽と自転車で走り去っていく君の姿を見て、不思議と失恋の痛みは和らいだ。どうあっても私は君の親だったんだと気付く。君には既に血の繋がった両親は居ないけれど、私はこの人生を賭して君の親になっていくんだ。     
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