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あとがき
2018年1月28日
悲報は突然でした。
「来年の夏のライブで、fly me to the moon 歌いたいけど、あの曲のカヴァーはCの十八番やからなあ。」
『歌ったらええやん。Fさんのピアノで演った日本語のオリジナル歌詞の良かったやん。』
「ほんだらギター弾いてくれる?」
『ギターで歌うん?』
「Bのギターで歌いたい、『奏 KANADE』の歌詞で。アコギで。」
『えー、アコギ練習せなあかんやん。まだ押さえるの厳しい。』
「リハビリ、リハビリ。時間あるやん。」
2年前に交通事故で、ギターリストの命でもある左手首を骨折した B は、血の滲むような努力でエレキギターは奏でられるようになっていました。でもまだまだ事故前の素晴らしい音には戻っていませんでした。
毎日、リハビリをしながら演奏活動を再開し、批評家たちの苦い言葉を受けることもありました。それでも頑張り続けていました。
音楽仲間たちは、彼を心の底から応援し、彼の完全復活を祈っていました。
新しいユニットでのライブが決まり、初日の練習の前日、彼から仲間の元に『体調が悪い』と連絡がありました。元々、体は強くなかった。
神様は自分の近くで、彼の演奏が聴きたくなったのでしょう。私たちから彼を奪ってしまった。
彼と奏でる約束をした『奏』〈fly me to the moon 〉、彼はきっと天国で練習しながら待っていてくれるのでしょう。
約束の夏は、もう来ません。
R.I.P B
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