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「一つの歌から派生した、いくつもの綺麗な歌があるっていいと思いませんか?それこそ敬意を払ったオマージュですね」
今まで自分と似通ったものには、自分の嫌な部分を重ねて見ていたような気がする。
自分は自分、全然別なものなんだと主張したかったのかもしれない。
なんとなく腑に落ちた。だから私は自分を知らない人の住む場所に憧れていたのか。
自分ではない人に、こうあるべきと決められた道を歩んで当然という枷から逃れるために。
自分で決めた自分の居場所を見つけるために。
派生歌という存在は、似通っている部分を包み込んで受け入れてもいいんだと言われているようだった。
「あの…よかったら、このあとお茶でもしませんか」
小さな声でそう伝える彼がいた。
「え?」
「すみません。なんか自然に口に出てしまったというか。お時間がなければ別にいいです」
彼は頭を掻きながら、天体望遠鏡の機材を手に取った。
「…お茶くらいいいですよ。星のお話もっと聞いてみたいから」
自分はこの時自然に笑えただろうか。
月を見上げて深呼吸してみた。背負っていた何かが軽くなった気がする。
(ねえ、お月様。私、一歩だけ前に進んでみてもいいですか?)
月は何も答えない。でもそこに答えがあるような気がした。
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