月の舟は、星の林に漕ぎ出ずる

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「学生さんなのね」 自分は短大を卒業して2年たつ。その前に一浪しているから、どう見ても自分より相手は年下のようだ。 「自分はOBなんですけど。部員が少ないので毎週手伝ってます。僕はこれでも社会人なんですが…。気が向いたらでいいです。いらしてくださいね」 そういうとサークルの後輩に呼ばれて天体望遠鏡の調整をしにその場を離れた。 来週お月様に会いに行くのもいいかもしれない。 今まで動いていなかった、自分の中の時計の針がカチっと動いたような気がした。 翌週からその場所へ通いだした自分がいる。 何度か通っているうちに、サークルの人たちとも会話をするようになった。 紹介してくれた男性は、話をしてみると自分より2つ上だった。「失礼ですが、もっと若いのかと思いました」と素直に感想を言うと、「よくそう言われます」と苦笑する彼は確かに童顔だ。 「今日の月は三日月なのでクレーターがよく見えると思います」 そう説明して、彼は他の参加者の間を飛び回っている。 今日手渡されたパンフレットには一つの和歌が紹介されていた。 懐中電灯の光を頼りに文字を追って見る。
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