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すげえ、神様って本当にいるのかよって、そう思った。
姉貴が旅行で買ってきたお土産。神無月に神が集うその神社の名が印された紙袋。
「有名な神社のお守りだから、ご利益があるわよ!感謝しなさい」
押し付けがましく渡してきた、それ。
何だよ、これ。
恋愛成就って……。
意味分からん。
俺、全国大会行くんですけど。
案の定、全国制覇は叶わなかった。
そりゃそうだ。
翌春。
何とかスポーツ推薦で大学進学も決めて、県内の端の市へ引っ越しての独り暮らし。
ある日、バイトの帰り道。
不意に浮かんだ名前も知らない少女の泣きっ面。
彼女もどこかでこの細い三日月を見ているのだろうかと、ぼんやり見上げながら歩いていた。
角を曲がって誰かとぶつかる。
「ぅわっ!!ごめん。大丈夫?」
「……ごめんなさい、私もちゃんと前見てなくて」
埃をほろいながら立ち上がった彼女が目を見張りながら「ウソ……」と呟く。
……ん?嘘?何が?
彼女の顔をよく見て俺も、嘘だろ……と心で呟いた。
今更かもしれないけど粗雑に扱ってごめんと、今まで御利益なんて一切無かったから財布の中に無造作に入れていたそれに謝った。
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