His case

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何かきっかけが作りたかった。 だから、いつもなら回れ右して帰りそうなものを、体が勝手に彼女の向かいの椅子に座らせた。 その気まずさといったら。 だって、他にもソファーは幾らでもあったのに。 彼女だってあんな表情になるのも当たり前。 努めて明るく言ってみる。 「緊張して眠れない?」 「……」 いや、そうだよな。絶対に警戒してる。 怪しいよな、分かる。 「もしかして、失恋、とか?」 笑って言った俺がバカだった。 図星だと、彼女の顔に書いてあった。 はああああ。即効、失恋かよ。 頑張れ、俺。 明日の試合前の緊張なんてどこかに吹っ飛んでいった。 それで言ったのが、このアホみたいな台詞。 「そっか……じゃあ俺とでも付き合ってみる?」 それに対してこの返し。 「バカじゃないの……」 その軽蔑した目。 そりゃそうだよな。 でも、言わずにいられなかったんだ。 些細なきっかけだとしてもすがりつきたかった
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