小さな約束

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クリーム色のカーテンが夜風にさらわれ緩やかにうねる。 嗅ぎ慣れてしまった私の鼻には分からない消毒薬の臭いも、きっと波うって居るだろ。 白い壁とクリーム色のカーテンに囲まれた深い藍色の北の空に、ガーネットスターが見える。 赤色超巨星 終焉が近付いている星。 そんなガーネットスターが自分と重なり、小さなため息が出る。 『ただいま』 少し髪を乱した君がネクタイを緩めながら入ってくる。 『お帰りなさい。毎日、無理しなくても良いのに…』 私の言葉を無視して窓際に立つと窓を閉める。 『夜風は未だ冷たいよ』 『ええ、でもカーテンは開けておいて』 君はドカリと床に鞄を置くと丸椅子を軋ませながら腰掛ける。 『今日さ、仕事の途中で貴女が好きそうなカフェを見つけたんだ。 今度一緒に行こう』 毎日、君は小さな約束を私にさせる。 まるで生きる理由を与えるように… そんな君に決まって私は答えるのだ。 『君は残酷だよね』 そう言いながらも、何か一つでも約束を果たしたいと思ってしまう。 君の策略は中々上手く行ってるみたいだよ。 そしてガラス越しのガーネットスターを目の端に写して願う。 どうか、もう少し時間を下さいと…
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