3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
クリーム色のカーテンが夜風にさらわれ緩やかにうねる。
嗅ぎ慣れてしまった私の鼻には分からない消毒薬の臭いも、きっと波うって居るだろ。
白い壁とクリーム色のカーテンに囲まれた深い藍色の北の空に、ガーネットスターが見える。
赤色超巨星
終焉が近付いている星。
そんなガーネットスターが自分と重なり、小さなため息が出る。
『ただいま』
少し髪を乱した君がネクタイを緩めながら入ってくる。
『お帰りなさい。毎日、無理しなくても良いのに…』
私の言葉を無視して窓際に立つと窓を閉める。
『夜風は未だ冷たいよ』
『ええ、でもカーテンは開けておいて』
君はドカリと床に鞄を置くと丸椅子を軋ませながら腰掛ける。
『今日さ、仕事の途中で貴女が好きそうなカフェを見つけたんだ。
今度一緒に行こう』
毎日、君は小さな約束を私にさせる。
まるで生きる理由を与えるように…
そんな君に決まって私は答えるのだ。
『君は残酷だよね』
そう言いながらも、何か一つでも約束を果たしたいと思ってしまう。
君の策略は中々上手く行ってるみたいだよ。
そしてガラス越しのガーネットスターを目の端に写して願う。
どうか、もう少し時間を下さいと…
最初のコメントを投稿しよう!