終章

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「――何人かの男子が女子に手を出したの。……まぁ、そういう事ね」 「なるほど、学生も大変だ」 真っ当な人間など、ホラー映画の中には居ないだろう。 俺も深くは追及しないし、悍ましくて聞きたくない。 「ってことはアウトブレイクから少なくとも5時間くらいは経ってる訳だ」 なんとなくテレビをつけた。 この周辺はほぼ完全に感染が広がっているようだが世間はどうなのだろうか。 『――ついに日本にもあの奇病が流行しました』 男性アナウンサーが、凶悪事件を報道するようなトーンで、“他人事の様に”読む。 『現在、中部地方を中心に感染が広まっている模様です。――現場の山崎さん』 しかし、中継は繋がらない。 スタジオがざわつくなら、見切れたスタッフがカンペを出した。 『……はい。どうやら、電波の状況が悪いようです。復旧次第、現場の状況をお伝えします。感染は依然として、拡大を続けており、他の地方にも広がる危険があります。仮に家族や知り合いでも、様子がおかしい場合は近寄らず、感染地域付近にお住まいの方はなるべく自宅や会社など建物から出ない様にしてくだざい。――では、ここで感染病に詳しい専門家の方にお話しを伺いたいと思います』 『今回の感染は狂犬病に似た未知の病原菌だとネットでは言われている様ですが、私は、化学兵器ではないかと懸念をしております。実際、とある国では――』 60程の男性が、何やら自慢げに話し、アナウンサーは適当に相槌を打つ。 「――中部地方、まんまここじゃねーかよ」 溜息がこぼれた。 首都圏はまだ無事らしく日本全国ではないことは安堵すべきだろうが、この他人事は当事者からするとたまったもんじゃない。
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