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「……これからどうするの?」
早々、缶ビールを飲み干した澪が呟いた。
「そうだな……ずっとこのままって訳には行かないだろうけど、先立つものも何もないからな。当面は無事な地域を目指す準備って感じかな。ってか、最後の一本なんだから一人で飲むなよ」
「そう……ね。そうした方が良いかも、二つの意味で」
適当なグラスを持ってきて、彼女の前に出す。
「はい、現役女子高生のお酌」
「なんか援交的な響きがするからやめて」
大人びた笑みに苦笑する。
「それで? 準備するにしてもどうするの?」
改めて、缶とグラスを軽く合わせ、澪が小首を傾げる。
「近くにコンビニあるし、スーパーやホームセンターも割と近い。その辺は問題ないと思う。それより、まずお宅の親の無事を確かめてからかな。俺の親父の職場は遠いし割りとデカいし、望み薄」
今も無事、と思うには絶望的だ。
「それなら気にしなくてもいいわよ。どっちも働いてるし、そもそも仲も悪いし」
澪は小さく肩を竦ませる。
「……ちなみに、普段なら今頃何してるんだ?」
「どっちも仕事は終わってる頃だけど、それぞれ“好きな人”と合ってる頃じゃないかしら」
――メンドクサイ家庭環境なのね。
口には出さなかった。
「それじゃ、このまま当面は協力――で良いのかな」
「もちろんよ」
答えて、澪は小さくあくびをした。
「……ごめん。流石に疲れちゃったわ」
「あぁ、もう休め。なんなら布団敷くけど」
「いい。ここで」
澪はソファーに倒れ込む。
「……毛布くらいかけろっての」
気丈に振舞っていたが相当無理をしていたらしい。
横になると、直ぐに寝息を立て始めた。
ーー俺も、もう休むとしよう。
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