終章

11/16
前へ
/17ページ
次へ
「……これからどうするの?」 早々、缶ビールを飲み干した澪が呟いた。 「そうだな……ずっとこのままって訳には行かないだろうけど、先立つものも何もないからな。当面は無事な地域を目指す準備って感じかな。ってか、最後の一本なんだから一人で飲むなよ」 「そう……ね。そうした方が良いかも、二つの意味で」 適当なグラスを持ってきて、彼女の前に出す。 「はい、現役女子高生のお酌」 「なんか援交的な響きがするからやめて」 大人びた笑みに苦笑する。 「それで? 準備するにしてもどうするの?」 改めて、缶とグラスを軽く合わせ、澪が小首を傾げる。 「近くにコンビニあるし、スーパーやホームセンターも割と近い。その辺は問題ないと思う。それより、まずお宅の親の無事を確かめてからかな。俺の親父の職場は遠いし割りとデカいし、望み薄」 今も無事、と思うには絶望的だ。 「それなら気にしなくてもいいわよ。どっちも働いてるし、そもそも仲も悪いし」 澪は小さく肩を竦ませる。 「……ちなみに、普段なら今頃何してるんだ?」 「どっちも仕事は終わってる頃だけど、それぞれ“好きな人”と合ってる頃じゃないかしら」 ――メンドクサイ家庭環境なのね。 口には出さなかった。 「それじゃ、このまま当面は協力――で良いのかな」 「もちろんよ」 答えて、澪は小さくあくびをした。 「……ごめん。流石に疲れちゃったわ」 「あぁ、もう休め。なんなら布団敷くけど」 「いい。ここで」 澪はソファーに倒れ込む。 「……毛布くらいかけろっての」 気丈に振舞っていたが相当無理をしていたらしい。 横になると、直ぐに寝息を立て始めた。 ーー俺も、もう休むとしよう。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加