終章

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◇ 翌日、早朝5時。 起きるには些か早すぎる時間帯だが、やけに目は冴えている。 俺達は真っ当な人気が無い中、食料の確保の為に最寄りのコンビニの前まで来ていた。 本来なら澄んだ空気の筈なのに、あっちこっちで、獣のような唸り声や奇声を上げられては台無しだ。 そもそも、命がけの徒歩5分に既に疲労困憊だった。 だがしかし、つい先ほど、“割りと良い物”も拾えたのはありがたい。 「――大丈夫?」 澪が見かねて声を掛ける。 「あぁ……大丈夫。平気だ」 ここに来るまでにパイプレンチを鈍器に何人か殴り飛ばしてきた訳だが、独特で生々しい感触が嫌に手に残っている。 昨日はやはり、頭に血が上っていたようだ。 目先の目的を持ち、幾分、冷静になった事もあり、不快感を感じる程度には余裕が出来てきたらしい。 良いのか悪いのか、微妙な所だ。 「さっさと、必要な物もらって帰ろう……っても――」 通い慣れた筈の店内に一歩足を踏み入れるだけで、高所の綱渡り並みに緊張する。 他に“客”は居ないようだが……しかし、考える事は、皆同じという事なのか、 「大分、荒らされてるわね」 澪がうんざり気に溜息を溢す。 品物のすべて、という訳では無いが、ほぼほぼ持っていかれていた。 やはり、食品系が殆どだが、雑誌類も無くなっている――手あたり次第だ。 兎に角、押し入れから引っ張り出したリュックと澪の持っていた学校指定のバッグに詰めるだけ詰め込むべく、物色を開始する。 「昆布はあんまり好きじゃないけど……選り好みはしてられんわな」 適当にリュックに詰めながら、何となく澪を見る。 やはり、というか……かなり美形だった。 スカートは学校の物だが、ワイシャツと黒のパーカーでもお洒落に見える。 俺の服という事もあり、サイズが合わない感じが……また、良いと思ってしまう。 ……僅か3こ下とはいえ、相手は現役高校生。道徳的にはNGか。 ともあれ女の子という事もあるのか、デザート類を中心に選んでいるようだ。 一しきり、物色を終え、彼女はおもむろにレジの中に入る。
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