終章

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何を探しているかと思うと、タバコの棚に手を伸ばした。 「……酒もタバコもやるって、典型的な不良じゃんかよ」 ついさっきまで、良いなーとか思っていたら、コレだ。 「ふふ、失望した? 見た目に騙され過ぎ。女の子に幻想持ちすぎじゃない?」 「リアル世知辛れぇー」 「あはは」 俺のリアクションがお気に召したのか澪は、声を出して笑う。 「……ビールも貰って行くか?」 「よろしくねー」 俺より嗜んでるとか……。 中にはアニメばりに理想的な女の子が居ると信じたい。 ――こんな世界だからこそ。 溜息をつき、奥の壁に備えられた冷蔵庫に向かう、その2歩目。 「きゃぁっ!?」 悲鳴に振り返る。 と、 「動くんじゃねぇ!!」 30代後半程のスーツ姿の男が、澪を後ろから腕で首を絞める様に捕まえていた。 片手には包丁が握られ、その切っ先が俺に向けられている。 どうやら、レジの裏に隠れていたようだ。 どうせビビるならもう少し警戒すべきだったか。 自身の甘さに後悔するがもう遅い。 今は、彼女の身が第一だ。 「……落ち着け、俺達はアンタの――」 敵意は無い事を伝えようにも、 「うるせぇんだよ! ぶっ殺すぞ!!」 聞く耳を持っていない。 「ここにあんのは、全部俺のだ! とっとと出てけ!!」 その目は泳ぎ、身体の所々が、時折ピクピクと不自然に動いている。 極度のストレスによるものだろうとも思ったが、包丁を向ける前腕あたりが、血で赤く染まっている。 袖も食いちぎられた様に破れていた。 「――感染者に襲われたのか?」 「あぁ、そうだよ! 妻になぁ!!」 澪を捕まえる腕に力が入る。 「どうなってんだ!? なんでこんな事になった!?」 男は苛立った様に包丁を持つ手で、頭をかきむしる。 澪も逃れようと抵抗しているが、対格差に加え首を絞められていてはどうしようも出来ない。
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