終章

7/16
前へ
/17ページ
次へ
◇ 住み慣れた自宅の玄関だが帰宅した、という実感はなかった。 「――ったく、なんで急に止まるのよ。ついて来いって言った癖に」 少女の苛立った声に我に返ると、切れ長の目に睨まれていた。 「……あぁ、いや――すまん。ちょっと待ってろ、一応家の中を確認する」 鍵は開いていた。 なら、他人が入っている事も考えられる。 真っ当な人間なままなら得に問題は無いだろうが、違う場合は穏便には済まない。 手早く一階を見て回り、二階の各部屋を確認する。 今朝と変わりがない。 変化と言えば、掃除や済み、洗濯物が干されている位か。 ようやく安堵して、一階に降りると少女は、台所で冷蔵庫の中を漁っていた。 人の家で勝手に――と、突っ込む気にはならなかった。 「どう何か問題あった?」 「いや、大丈夫だ」 「一応、鍵閉めておいたから。あと、食べ物貰ってるわよ」 「……お好きに」 俺は、リビングのソファーに座り込んで、うな垂れた。 時計を見ると5時45分。 まだ1時間も経っていない。 「貴方、一人で住んでる訳じゃないんでしょ? 結婚してるの?」 「んー? いや、親と3人」 「今、いくつ?」 「二十歳」 「一人暮らしする気とかなかったの」 「取りあえずはな。給料も少ないし?」 「そんなこと言ってると、モテないわよ。彼女とか居ないでしょ?」 「ほっとけJK。お前は居るのか」 嘲るような言い回しに、同じく嘲りで返す。 「居たわよ。一か月くらい前まではね」 あ、ちくしょう。負けた……とか、思ってしまった。 「それで、その親は共働きなの? 今、居ないんでしょ」 言って、袋を皿に開け電子レンジに突っ込んだ。 冷凍食品の何かだろうか。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加