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外が暑いから、と。彼女は言った。
確かに気温は三十度近くて、蝉の声は四方八方から聞こえてくる。燦々と照りつける太陽は容赦なくて、風は気持ちばかり吹くけれど何とも生ぬるい。薄いブラウスが肌に張り付いて気持ちが悪かったけれど、隣を歩く彼女の体温は不思議と心地よかった。
夏の福岡は、やっぱり暑い。九州だから暖かいなんて嘘っぱちだけど、夏はどこに行っても暑いのだ。アスファルトからの照り返しで足の裏がジリジリ痛む。
そうだね、暑いね、なんて当たり障りないことを返したけれど、果たして私の声はいつも通りだろうか。喉の奥がヒリヒリと痛む。喉が渇いているのだ。だって今日は、真夏日だから。うん、きっとそう。博多駅の駅ビルでフルーツジュースを飲んだけれど、それでもやっぱり、暑いものは暑い。別に久しぶりに会えたからとか、そういうことではない。
「プラネタリウムなんて。珍しいね」
「そうですかね? まあ、私はそんなにロマンチストやないんですけどね」
星なんて。ただ光の塊が空に浮かんでいるだけだ。数億光年先に浮かんでいる石の塊がたまたま目に映っただけで。別にそんな、それに何か意味があるなんて思っちゃあいない。
でも貴女が「星が好き」だなんて言うから。私はつい、タブレットで調べてしまったのだ。お金があまりかからなくて、ついでに涼しくて、人も少ないような場所を。
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