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そんなことを言っていたらいつの間にかおめあての場所はすぐ目の前にあった。ビルの中にある、小さなプラネタリウム。平日の真昼間なんて誰もいるわけがない。がらんとしたホールには暇そうにした受付の女性が座っているだけだった。
大人二人分のチケットを買って指示された場所へと向かう。私たち以外には誰もいなくて、本当にここでいいのか少しだけ不安になる。きっと今頃外では多くの人が汗を流して働いているのだろう。私だって同じような日々を過ごすはずだった。こうやって、さちさんに誘われなければこんな場所には一生来ることはなかっただろう。そもそも地元の、しかも穴場みたいなプラネタリウムに。行くはずなんて、ない。
「誰もいないね」
「そりゃ、平日ですからね」
「そういうもの?」
「そういうものです」
係員に促されてプラネタリウムに足を向ける。本当に私たちしかいないみたいだ。中は一層薄暗くて、肌の奥を刺されるように涼しく感じた。
一番見やすいのはやはり中央に近いところだそうだ。幸いにも私たち以外に誰か来る気配はない。それならばと、特等席に座ろうとして。そこではたと気がついた。
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