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(何を、言おうとしたんだろう)
ぼんやりと映し出された星々を眺めながら、彼女の紡ごうとした言葉の先を考える。この状況で何を言うのだろうか。実は彼氏がいるとか? 何なら結婚までしちゃうとか? それならそれで私は諦めがつく。何のかって、まあ、失恋ということになるけれど。別に叶うはずないと思っていたから今更傷ついたりはしない。多少やけ酒をする程度で。全く、これっぽっちも。傷ついたりはしない。
むしろこれ以外の展開が想像つかない。仕事を変えるにしても別に今じゃあなくていい。というより、ただの友人である私に言う必要はない。
(終わったら、聞いてみようか)
すぐそばにある体温を感じながらゆったりと瞬きをする。くるりと回る星の動きに視線を合わせてみると、何て穏やかなものかと驚いてしまう。いつも忙しなく働いている自分がバカみたいに、空ではこうやって穏やかに、星は流れている。
なんだか自分の抱えて居る悩みが随分とちっぽけなものに思えた。今隣にあるこの体温が感じられたら、もうそれでいいんじゃあないのだろうか。別にそれがずっととは言わなくとも、この人生の中でほんの少しでも私の近くにいてくれたら、もうそれで十分なんじゃあないのか。そう思わされていた。
だって、無理な話なのだ。私は女性で、彼女も女性で。私がこうやって普通じゃあない感情を抱いてしまったことですでにいびつなものになってしまっている。だったらこの現状に満足して納得するしかない。これ以上、歪を大きくしてしまうことに何のメリットもない。
(間違っている、とは、思いたくないけれど)
誰かを愛することに間違いがあるのかと言われたら、きっとそんなものありえないと言えるだろう。誰が誰を好きになってもいいはずだ。でも私の場合はきっと違う。だってその理論は異性間でしか成り立たないからだ。男性が女性を、もしくは女性が男性を愛することに何の隔たりもない。
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