167人が本棚に入れています
本棚に追加
「さっぱりわからないんだけど。どうして孝臣がそんなに怒ってるのか」
「そりゃフツー怒るでしょ!」
「解雇されたのは私なのに?」
「だから! そこじゃなくて! オレが怒ってるのは君が急に」
「いなくなったから? どうしてそれで孝臣がそんなに怒るの? 貴方は私の何?」
「何って、それは……」
彼女が大袈裟に溜息を吐きながら、小さく呟くのが聞こえた。「情けない男」と。言い返せないオレ。
子供達の蹴ったボールが転がってきて、それを拾って渡してやる彼女。その瞬間、子供達にだけ見せた満面の笑みに嫉妬する。
「Ya, basta. Dejame en paz.(もういい。ほっといて)」
スペイン語で吐き捨てながら足早に去っていくアスティ。その背中に掛ける言葉が、どうしても出てこなかった。
最初のコメントを投稿しよう!