第三章 / Tercer Capitulo

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「さっぱりわからないんだけど。どうして孝臣がそんなに怒ってるのか」 「そりゃフツー怒るでしょ!」 「解雇されたのは私なのに?」 「だから! そこじゃなくて! オレが怒ってるのは君が急に」 「いなくなったから? どうしてそれで孝臣がそんなに怒るの? 貴方は私の何?」 「何って、それは……」  彼女が大袈裟に溜息を吐きながら、小さく呟くのが聞こえた。「情けない男」と。言い返せないオレ。  子供達の蹴ったボールが転がってきて、それを拾って渡してやる彼女。その瞬間、子供達にだけ見せた満面の笑みに嫉妬する。 「Ya, basta. Dejame en paz.(もういい。ほっといて)」  スペイン語で吐き捨てながら足早に去っていくアスティ。その背中に掛ける言葉が、どうしても出てこなかった。
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