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今日はせっかく職場を早く出られたのに、なぜこんなにも緊張を強いられる状況になってしまっているのか。
とにかく、彼女の目的地までさっさと案内したら早々に別れて、自分のペースを取り戻そう。そう考えながら歩いていると、
「オー! アイスクリームショップ!」
背後から、妙にテンション高めの声が上がった。訝しみながら振り返るが、声の主はもちろん彼女だ。大きなスーツケースをゴロゴロと引きながら、店の前の看板に近付いていく。
見ると、アイスクリーム専門のチェーン店だった。この店の前は頻繁に通っているはずなのに、これまでオレの意識に登ったことがない。子供の頃には好きだった気がするのに、いつ頃からアイスクリームへの興味を失くしたのだろうか…… わからない。
そんな自省をしつつオレも店に近付き、彼女がまだ見入っている看板を後ろから覗き込む。30種類程のフレーバーが、カラフルな写真とともに紹介されている。
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