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「……なに言ってるの」
「えっと、だから、オレは君のことが……」
「それは聞こえたわ」
「いや、その、ごめん」
「なぜ謝るの」
「それは、その」
「いい加減にして」
オレの胸に刺されとばかりに、唐突に突き付けられる、白くて細い指先。何か言おうと開かれる唇。
だが、言葉よりも先に涙がこぼれ落ちた。そのことに自分でも驚いているらしく、翡翠色の大きな瞳が、一際大きく見開かれる。
プラットホームにもう一度流れる発車のアナウンスが、乗車の意志をしつこく確認する。彼女は動かない。オレも動けない。
突き付けられていた指が、いつの間にかオレのシャツを小さく握って震えている。彼女の細い鼻から、微かに溜息が漏れた。
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