第三章 / Tercer Capitulo

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 目の前で電車の扉が閉まり、車輪が軋みながら回転を始める。  駅員がチラリとこちらに視線を向けると、改札へ向かっていった。最終電車に乗らないならさっさと駅から出ていけ、ということだろう。  ドン、と胸に何かが当たり、視線を下へ向けると彼女の頭があった。細い髪がオレの頬に当たってくすぐったいが、手で払うと怒られそうなので我慢する。  左の掌を後頭部にそっと添えた。初めて触る頭蓋骨の感触、その小ささに密かに驚く。  シャツを掴んでいた彼女の指が離れたかと思うと、そのまま腕に沿って降りてきて、オレの手を捕まえる。  言葉はない。そのまま歩き始めようとする彼女。
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