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「ちょっと待って」
「どうして」
「いや、だから、ちょっと待ってって」
「いまさら何言ってるの。もう遅いわ」
「そうじゃなくて。スーツケース! 君の!」
ピタリと動きを止めた彼女の視線が、オレの顔と背後のスーツケースを幾度か往復したかと思うと、背を折って笑い始めた。
「あぁ、こういう時、必ず失敗するのよ、私」
「オレが運ぶよ」
「そう? 別にここに置いといても良いけど」
「本気で言ってる?」
「かなり本気。もういらないから、ほっといたら?」
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