第三章 / Tercer Capitulo

46/47
前へ
/347ページ
次へ
「ちょっと待って」 「どうして」 「いや、だから、ちょっと待ってって」 「いまさら何言ってるの。もう遅いわ」 「そうじゃなくて。スーツケース! 君の!」  ピタリと動きを止めた彼女の視線が、オレの顔と背後のスーツケースを幾度か往復したかと思うと、背を折って笑い始めた。 「あぁ、こういう時、必ず失敗するのよ、私」 「オレが運ぶよ」 「そう? 別にここに置いといても良いけど」 「本気で言ってる?」 「かなり本気。もういらないから、ほっといたら?」
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!

167人が本棚に入れています
本棚に追加