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「ワタシ……ガイコクジン……」
「それは見ればわかるよ」
日本語を予習してきたらしい。たどたどしい発音だが、安易に英語を使わずに、丁寧に言葉を紡ごうという姿勢に好感を覚えて、思わず口許が緩む。
自分の日本語が通じて緊張が解けたのか、彼女の肩からも少し力が抜けた様に見えた。
「ワタシ、イク、コノアドレス」
「うん。タクシーに乗ろうとしてたよね?」
「タクシー、イカナイ。ナゼ?」
彼女が差し出したメモを見ると、駅からそう遠くはない住所が記されていた。
近距離だから乗車拒否されたのか、それとも住所がアルファベット表記だから嫌がられたのか… いずれによせ、理由はもう確かめられない。
「Please、タスケテ、ワタシ」
この状況で断るのは至難の業だろう。
心の中でこっそり溜息を吐きながら、ろくに言葉も掛けないままオレは歩き出した。
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