第一章 / Primer Capitulo

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「ワタシ……ガイコクジン……」 「それは見ればわかるよ」  日本語を予習してきたらしい。たどたどしい発音だが、安易に英語を使わずに、丁寧に言葉を紡ごうという姿勢に好感を覚えて、思わず口許が緩む。  自分の日本語が通じて緊張が解けたのか、彼女の肩からも少し力が抜けた様に見えた。 「ワタシ、イク、コノアドレス」 「うん。タクシーに乗ろうとしてたよね?」 「タクシー、イカナイ。ナゼ?」  彼女が差し出したメモを見ると、駅からそう遠くはない住所が記されていた。  近距離だから乗車拒否されたのか、それとも住所がアルファベット表記だから嫌がられたのか… いずれによせ、理由はもう確かめられない。 「Please、タスケテ、ワタシ」  この状況で断るのは至難の業だろう。  心の中でこっそり溜息を吐きながら、ろくに言葉も掛けないままオレは歩き出した。
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