桜の木の下には

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だが違った。 家や会社の周辺で女の姿を見るようになった。 何か言うわけでも、何かしてくるわけでもない。 ただ、無表情でずっと立っているだけなんだ。 それがとても怖かった。 そんなことが半年近く続き、俺は精神的に追い詰められた。 見かねた悪友が引っ越し先と仕事先を見つけてくれ、女の姿がないうちに俺は逃げた。 女もさすがに諦めてくれると思っていた。 新天地で俺は新しい生活を始め、新しい仕事にも慣れて可愛い彼女も出来た。 女のことも忘れていた。 それなのに、こいつは今日俺の前に現れた。 仕事から帰るとアパートの玄関の鍵が空いていた。 彼女が来てるのかと思い名前を呼びながら部屋に入ると、いたのは長い黒髪を乱しまるで鬼の形相で俺を見る女だった。
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