桜の木の下には

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人間は本当に恐怖を覚えた時、声を出すことすら出来ないんだと知った。 女の両手には包丁が握られていた。 「………こんなに愛してるのになぜ逃げるの?なぜ他の女を見るの?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?!なぜ?!!なぜ?!!!」 「お、お前とは1年も前に終わってるだろ!」 女の言葉に思わずそう返してしまった。 「………さない。許さない。許さない!許さない!!許さない!!!ゆるさなぁぁぁぁいぃぃぃぃぃっっっ」 逆上した女がものすごい形相で包丁を振り回してくる。 死の恐怖を覚え、必死に抵抗して俺は女から包丁を取り上げた。 包丁を奪われたにもかかわらず奇声をあげながら襲いかかってくる女に、目をつぶって思わず手を前に突き出した。 包丁を持っていた手を……… 「………あ………」 小さく漏れた女の声が耳に入ると同時に感じた、何か嫌な感触。
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