桜の木の下には

8/15
前へ
/19ページ
次へ
鉄の臭いを感じて目を開けると、自分の持つ包丁が女の腹に深く突き刺さっていた。 生温かい血が俺の手を濡らしている。 「うっ、うわぁっっ!」 包丁を離し後ずさりすると、女がその場に崩れ落ちた。 乱れた黒髪の隙間から見える目は空を見つめていた。 ………死んでいる? 殺した?殺したのか?!殺した?! 俺が!俺が!!俺が!? 正当防衛だろっ?!いやっ、誰が信じる!? 俺はパニックになっていた。 その時、着信音が流れた。 血のついた震える手でケータイ電話を触る。 着信画面には彼女の名前………。 その名前を見て少し冷静さを取り戻した。 彼女を本気で愛している、失いたくない。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加