0人が本棚に入れています
本棚に追加
………足元がフワフワしている、夢か?
白いもやで周りがよく見えない。
ふと、俺の頬を風が撫でた。
その方向を見ると向こうの方に桜が見え、そこに人影が見える。
名前を呼ばれた気がした。
そういえば彼女と桜を見に来ていたんだっけ。
人影は彼女なんだと思い、桜の方へ歩み寄る。
長い髪が風に揺れているのが見えた。
………違う、彼女じゃない。
彼女は肩にかからないくらいのボブだ。
そう気づいたのに、分かっているのに、足が歩みを止めてくれない。
嫌だ、嫌だっ、そっちには行きたくない!
次第にもやが晴れてきて俺が見たのは、腹に包丁が刺さり赤く染まっている、あの女だった。
妖艶な笑みを浮かべ、俺を見つめ、血に濡れる唇が動いた。
「………サナイ。………ナサナイ。モウハナサナイ。」
最初のコメントを投稿しよう!