桜の木の下には

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………足元がフワフワしている、夢か? 白いもやで周りがよく見えない。 ふと、俺の頬を風が撫でた。 その方向を見ると向こうの方に桜が見え、そこに人影が見える。 名前を呼ばれた気がした。 そういえば彼女と桜を見に来ていたんだっけ。 人影は彼女なんだと思い、桜の方へ歩み寄る。 長い髪が風に揺れているのが見えた。 ………違う、彼女じゃない。 彼女は肩にかからないくらいのボブだ。 そう気づいたのに、分かっているのに、足が歩みを止めてくれない。 嫌だ、嫌だっ、そっちには行きたくない! 次第にもやが晴れてきて俺が見たのは、腹に包丁が刺さり赤く染まっている、あの女だった。 妖艶な笑みを浮かべ、俺を見つめ、血に濡れる唇が動いた。 「………サナイ。………ナサナイ。モウハナサナイ。」
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