0人が本棚に入れています
本棚に追加
「………ちっ。」
包丁を突き刺したときの肉の感触、鼻につく鉄のような匂い、口から小さく漏れた声、包丁を握りしめる手に伝う生温かな血の温度………
思い出して舌打ちが出た。
こいつに苦しめられるのも、あともう少しの辛抱だ。
今も向けられているその目を睨み付け、俺は穴堀を再開した。
こいつは俺が1年ほど前に付き合ってた女だった。
といっても、1ヶ月ほどでこっちから別れたのだが。
出会いは桜が咲く少し前の頃、大学4年から3年付き合った彼女にひどい裏切りをされ荒れていた頃だ。
その日もひどく酔いつぶれ、友人に見放され道で転がっていた。
それを介抱してくれたのがこいつだった。
最初のコメントを投稿しよう!