日常の片隅に

桜の木の下には

見た目は普通で長い黒髪の暗い感じの女だったが、元カノの裏切りや友人に見放されて飢えていたのだろう。

見知らぬ自分を介抱してくれた女の優しさに心惹かれ、そのまま勢いで付き合った。

だが心惹かれたなんて一瞬だ、錯覚だったんだ。

つまらない女だった。

自分から話すことなんてほとんどない。

俺の話に相づちを打つくらいだ。

そんなの会話が弾むわけがない、楽しくなるわけがない。

しまいには、花見に連れていきたい場所があると初めて誘われ、ついていった場所が最悪だった。

郊外の住宅地から少し離れた森と言っていいくらいの木々が生い茂るところを抜けた先の、丘のような場所に連れていかれた。

そこには大木が１本あるだけ。

枯れているのか花も葉もついていない、裸の大木。