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昨日は違った。
何となく振り返った視線の先に片山さんが立っていた。そのうえ、こちらを向いていたのだ。
いつもの私なら彼に焦点を合わせることなく視線を流し、彼を認識していないように後ろの景色をなんとなく見ている風を装ったはずだ。
それが唇の端を自然に持ち上げ、首を右に傾けると少しだけ歯を見せた。
彼を狙っていることを隠そうとしない隣の席の彼女のように。
自分の意思を無視して身体が勝手に動いたように感じた。
このところとても気持ちが軽く、自然と笑みがこぼれたのだ。
片山さんは笑顔で右手を軽く挙げるとこちらへ向かってきた。鼓動が早くなると同時に顔に血が集まってくるのを感じた。
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