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顔から火が出そうとはこのことだ。
慌てふためき、残ったコーヒーを倒してこぼした。
テーブルから流れ出す前に紙ナプキンで押さえた。ふき取りきれないコーヒーが床に落ちる前に紙ナプキンを取りに席を立った。
数枚を上から乗せるとなんとか床に流れ落ちるのを防げた。紙ナプキンはすぐにコーヒーの色に染まってテーブルに張り付いた。
間違えてスタンプを送ったと言い訳を送らなくてはとスマートフォンに手を伸ばす。
彼から「ありがとう」とハートのスタンプが届いていた。
我が目を疑った。店の窓に映る自分の姿が見える。
テーブルに空のカップが乗っている。その前にスマートフォンを握っている女が映っている。
ガラスに映る自分は別人のように見えた。
覚悟を決めた。
指が勝手に動くのは、いつも妄想する甘い恋愛の夢のせいだ。
恋愛漫画や小説を読みすぎているせいだ。
自分の作る物語に入ったからだ。
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