星空の手紙

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 目を覚ますと、涙が頬を伝っていた。  たまに見る夢は、幼い頃の記憶。  あの日の約束は無惨にも破られ、母は数ヵ月後に他界した。  幼かった僕は理解が出来ずに「かくれんぼしているママを探すんだ!」って走り回った。  涙で顔をぐしゃぐしゃにして、縁の下で埃まみれになり、水溜りに足を取られて泥だらけのまま駆け出す。  でも、どれだけ探しても母はいない。  あれから二十五年。幼馴染の早苗と結婚して、新たな命を授かった。  予定日を来月に控えた早苗は里帰りしている。のどかな田舎で、僕の実家のすぐ近くだ。  明日は休日。仕事を定時で切り上げて、妻の下へと車を走らせた。  その道中で渋滞に巻き込まれ、気が付けば日付が変わろうとしている。こんな時間では、お義父さんとお義母さんに迷惑を掛けるだろう。  早苗には明日の朝に行くと連絡して、そのまま実家へ向かった。
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