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両膝を突いて俯き、涙で滲んだ手紙を胸に当てる。
足音が聞こえて顔を上げると、かすんだ瞳に不器用な笑顔が映しだされた。
「見つかってしまったな」
気難しい父が笑顔を向ける先は、僕の後ろにあるハナミズキ。
振り返ると、夜空の光を纏ってキラキラと輝く母が微笑んでいた。
その姿は涙でぼやける。でも、涙を拭うと消えてしまいそうで、掠れた声だけを必死に絞り出した。
「母さん……やっと……見つけたよ……」
星空は一つの道となり、天の川となって光を繋ぐ。
幻想的な瞬きは迷う事無く真っ直ぐに降り注ぎ、ハナミズキへと舞い降りた。
失われた世界は、彩を取り戻して輝く。
それは一生に一度だけの、家族と巡り会える奇跡の時間だった。
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